色彩計画・カラースキーム

空間づくりの重要なポイントとなる色彩計画(カラースキーム)。
色には視覚的な効果や心理的な作用があり、選び方次第で空間の印象や機能性にも大きく影響します。

オフィスレイアウトやインテリアを検討する際に知っておきたい、色に関する基本的な情報をまとめています。

1. 色(いろ)とは?

とは、光・物体・視覚の3つが揃ったときに知覚される感覚です。

色鉛筆や絵の具のセットなどで誰もが馴染みのある色=共通認識できる色を基礎として、実際には人の視覚はさらに膨大な数の色を識別できます。とは言え、人には感覚の個人差や環境の違いもあるため、色を正しく伝え合うのはなかなか複雑。

そういった条件の差異を解消して色を正確に伝達・表現するために研究・開発されたのが、表色系と呼ばれるシステムです。

代表的なものとして、色の正確な表示を目的としたマンセル表色系、色彩調和を目的としたオストワルト表色系PCCS(日本色研配色体系)などがあり、芸術やデザインをはじめ、各分野で活用されています。

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2. 色の基本用語

以下では、表色系全般に通ずる基本的な用語を簡単にまとめています。

2.1 色相

色相環

色相とは、色み、色合いのこと。

色は物に光が当たって反射することで認識される視覚的な感覚であり、その波長の範囲によって赤、橙、黄、緑、青、紫と変化します。その色味の違いを表したものが色相です。

そして、この色相を連続的に、円状に示したものが色相環。表色系システムによって色数が多少異なりますが、いずれの場合も色と色の関係性を理解するために役立ちます。

2.2 明度

明度

明度とは、光の強弱、つまり明るさを示す度合いです。

それぞれの色相においては、明度が高いほど軽く明るい色になり、低いほど重く暗い色になります。

彩度のない白から黒までの濃淡のみで表される色は無彩色と呼ばれます。

明度は、空間の「広さ」の感じ方に大きく影響します。

2.3 彩度

彩度

彩度とは、鮮やかさを示す度合いです。

赤、橙、黄、緑、青、紫などのそれぞれの色相において、混じり気のない色ほど彩度の高い色で、総じて純色と呼ばれます。

純色に色を混ぜていくにつれて鮮やかさが失われ、彩度が下がります。

2.4トーン

トーン

トーンとは、明度と彩度の複合的な概念で、色の調子の違いのことです。

同じ色相の中でも、明度と彩度の関係の変化で、明暗、濃淡、強弱など印象が変わります。トーンは、その調子の変化をわかりやすく分類し、言語化したものです。

トーンの各区分には、ビビッド、ストロング、ソフト・・・のような名称と、鮮やか、強い、柔らかな・・・といった形容詞で表現される固有のイメージがあります。

演出したい空間のイメージがあれば、トーンの固有イメージを手掛かりに配色を考えることもできます。

【参考】PCCSのトーンのイメージ

PCCSトーンのイメージ

トーンは、各色相においてもっとも彩度の高い純色、そこに白のみを混ぜた明清色、純色にグレーを混ぜた中間色・濁色、純色に黒のみを混ぜた暗清色で成り立っており、その中でさらに区分けされています。

純色 – 各色相の最も彩度の高い色

Vivid(ビビッド):
鮮やか、冴えた、派手な、目立つ、生き生きとした

明清色 – 純色に白を混合した色

Bright(ブライト):
明るい、華やかな、陽気な、健康的な

Light(ライト):
浅い、澄んだ、爽やかな、楽しい、子供っぽい

Pale(ペール):
薄い、軽い、淡い、優しい、弱い、若々しい、女性的、あっさりした

中間色 – 純色に灰色を混合

Strong(ストロング):
強い、くどい、動的な、情熱的な

Soft(ソフト):
柔らかな、穏やかな、ぼんやりした

Dull(ダル):
鈍い、くすんだ、中間色の

Light grayish(ライトグレイッシュ):
落ち着いた、渋い、おとなしい

Grayish(グレイッシュ):
灰みの、濁った、地味な

暗清色 – 純色に黒を混合

Deep(ディープ):
濃い、深い、充実した、伝統的な、和風の

Dark(ダーク):
暗い、大人っぽい、円熟した、丈夫な

Dark grayish(ダークグレイッシュ):
重い、陰気な、堅い、男性的

無彩色 – 明度だけで表される色

White(ホワイト):
清潔な、新鮮な、冷たい

Medium gray(ミディアムグレイ):
スモーキーな、しゃれた、寂しい

Black(ブラック):
高級な、フォーマルな、シックな

2.5 補色

補色

補色とは、色相環において正反対の位置にある色のこと。補色は互いの色を引き立たせるため、組み合わせることでより鮮やかに見えます。

2.6 コントラスト

色のコントラスト

コントラストとは、対比・差異のこと。

色相、明度、彩度のそれぞれにおいて、差が明確な色を組み合わせるとコントラストは強くなります。配置(並べる、周囲を囲むなど)や量の加減でも印象が変わりますが、コントラストの強い組み合わせは色の境目が明確で、メリハリの効いた印象になります。

反対に、コントラストの弱い組み合わせは、色の境目がぼんやりと曖昧で落ち着いた印象になります。

看板や誘導のサインなど、視認性や誘引性が必要な場合には、色のコントラストが重要になります。

2.7 モノトーン

モノトーンの色調

モノトーンとは、単一な調子のこと。mono-(モノ)はギリシア語語源で「単一の」を意味します。

色においてモノトーンと言えば、一般的に白・灰・黒の無彩色と思われがちですが、色調が単一であれば、有彩色の明度差や濃淡差での組み合わせもモノトーンです。

モノトーンの配色は、色と色が馴染むため無難にまとまり、落ち着いた印象になります。

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3. 色の性質と心理効果

視覚的な色分類

一般的に水道の蛇口は赤が温水、青は冷水とされるように、色にはそれぞれ連想されるイメージや心理効果があります。

色相は視覚的に暖色寒色中性色で分類され、インテリアにおいても、それぞれの効果を活かすことでより快適な空間をつくることができます。

以下では、各色の持つイメージや効果についてまとめています。

3.1 暖色

暖色とは、熱や暖かさ、太陽や光を連想させる赤系から黄までの色を指します。

赤

赤(レッド)は、熱や強さを感じさせる色。活力を与え、気分を高揚させる効果があります。

視覚的に目を引くため注意を引きやすく、また印象に残りやすい色でもあります。

橙

橙(オレンジ)は、暖かさ、明るさを感じさせる色。陽気、快活といったポジティブな印象が強く、エネルギーや親しみ、開放感を感じさせる効果があります。

黄

黄(イエロー)は、明るさや楽しさを感じさせる色。光や太陽のイメージが強く、活動的な印象を与えるほか、注意を引きつける効果もあります。

楽しい気分になりやすいことからコミュニケーションを活発にする効果もあるとされています。

3.2 寒色

寒色とは、寒さや冷たさを感じさせる青みがかった緑を含む青系の色を指します。

青

青(ブルー)は、冷静さ、爽やかさを感じさせる色。空や海のイメージが強く、清潔感や開放感を与えるほか、心を鎮め、集中力を高める効果もあります。

一般的に好感度の高い色とされ、コーポレートカラーとしても人気のある色です。

3.3 中性色

中性色とは、暖かさ・寒さといった性質を感じさせない色のことです。

緑

緑(グリーン)は、安らぎや平穏を感じさせる色。植物のイメージが強く、自然で健康的な印象を与えます。

緊張を緩和してリラックスさせる、目の疲れを軽減するといった疲労回復の効果があるとされます。

紫

紫(パープル)は、赤と青の混合から成る色で意味合い的にも2面性があり、場面によって異なる印象を与える色です。

高貴で神秘的なイメージがあり、感覚を研ぎ澄ませ、感性を高める効果があるとも言われます。

3.4 膨張色と収縮色

膨張色と収縮色

膨張色とは、同じ面積でも他の色より広く大きく感じる色のことで、明度の高い色や暖色系の色が該当します。

収縮色は反対に他の色より狭く小さく感じる色のことで、明度の低い色や寒色系の色が該当します。

狭い空間を広く見せたいときには、壁や天井など広い面積に膨張色を使うと効果的とされます。反対に、隠れ家や秘密基地のような雰囲気を出したいときなどには、収縮色を使うと効果的です。

3.5 進出色と後退色

進出色と後退色

進出色とは、黒を背景にしたときに手前に飛び出しているように見える色のこと。明度の高い色や暖色系の色が該当します。

後退色は逆に引っ込んで見える色のこと。明度の低い色や寒色系の色が該当します。

奥行きや遠近感を出したいときには、進出色と後退色と組み合わせて使うと効果的です。

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4. 空間の色彩計画について

空間の色彩計画

インテリアの色彩計画は、その空間の用途・目的に応じた心理的な快適性を高めるための大切なプロセスです。

色の持つ心理作用を生かしたい場合にも、全体の調和がとれていなければ期待する効果が得られません。逆に、秩序ある適切な配色は、空間に新たな価値を生み出すことにもつながります。

では、調和のとれた秩序ある色彩計画というのは、どのように立てればよいのでしょうか?

4.1 配色の比率

空間の色彩計画を立てる上で参考となるのが、配色における定理です。アートやデザインの世界に人が最も美しいと感じる黄金比があるように、空間の色彩計画においても、全体で見たときにバランス良く感じられる比率があります。

推奨される配色比率は以下のようなものです。

  • ベースカラー:70%程度(主に壁・天井・床など)
  • メインカラー:25%程度(家具・床など)
  • アクセントカラー:5%程度(小物など)

オフィスにおいては、執務やミーティング、休憩など、各スペースの用途・目的に応じて選び方を変える必要がありますが、このバランスを参考にすることで、それぞれの空間のパフォーマンスを高め、印象良く見せることにつながります。

4.2 ベースカラーの選び方

ベースカラー

オフィス空間のベースカラーには、空間の中で最も広い面積を占める床・壁・天井などが該当します。

床・壁・天井といった内装は、賃貸物件などでは特に気軽に変更のできない部分です。そのため、執務や学習などで長時間過ごす空間では、自然に見えて飽きのこない無難な色を選ぶことが推奨されます。

中小規模のオフィスなどで天井があまり高くなく、また採光も限られるような場合には、天井や壁に明度の高い色を使うことで空間に広がりを感じさせ、実際より広くみせるといった効果を得ることができます。

反対に、天井や壁の上部に明度の低い色を使えば、落ち着いた印象や秘密基地のようなムードを出すこともでき、集中力を高めたい場合などには効果が望めます。

4.3 メインカラーの選び方

メインカラー

オフィス空間を印象付けるインテリアのメインカラーは、デスクやテーブル、チェアやソファといった家具、あるいは床・壁の一部などで取り入れるのが一般的です。

オフィスにおいては、規模次第でもありますが、メインカラーにコーポレートカラーを適用して全体に統一感を出す、あるいはスペースの目的ごとに色の心理効果を考慮しながらメインカラーを決めるという方法があります。

4.4 アクセントカラーの選び方

アクセントカラー

インテリアにメリハリをつけるアクセントカラーは、空間全体における差し色になります。後から追加できるインテリア小物や照明器具、クッション等のファブリックで取り入れるのが一般的です。

小さな面積で使うアクセントカラーは、強調色で基本的には彩度が高めの色、ベースカラーと対照的な色で目を引くようにします。

ベースカラーに主張しない色を選んだ場合には、このアクセントカラーでぼんやりした印象を引き締めることができます。この”引き締め”が、空間全体をセンス良く見せるためにも重要なポイントとなります。

配色比率については以上になります。
つづく「オフィスインテリアの色彩計画②」では、調和の原理や配色パターンなどをご紹介しています。

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