視覚的にも心理作用的にも、それぞれに異なる性質を持つ「色」。組み合わせることで印象が変化し、調和していれば見る人に好感を与えますが、調和していなければ不快な印象を与えてしまうものです。
当然のことながら、オフィスや教室をプランニングする場合においても、利用者に好感を与える色の組み合わせを意識する必要があります。1つの空間を成す内装、家具、小物といった要素に色の調和、全体としてのまとまりがあれば「おしゃれ」「センスが良い」という印象を与えやすく、また、その”場”の機能性や快適性を高めることにもつながります。
このページでは、調和する色の組み合わせ方を論理的に考える方法についてまとめています。
*色の基本情報については「オフィスインテリアの色彩計画①」をご覧ください
【 目次 】
- 配色の調和について
- 配色のパターン
2.1 ダイアード配色|Dyad
2.2 トライアド配色|Triad
2.3 スプリットコンプリメンタリー配色|Split complementary
2.4 アナロガス配色|Analogous color
2.5 ナチュラルハーモニー|Natural harmony
2.6 ドミナントカラー配色|Dominant color
2.7 トーン オン トーン配色|Tone on tone
2.8 ドミナントトーン配色|Dominant tone
2.9 トーン イン トーン配色|Tone in tone
2.10 トーナルカラー配色|Tonal color
2.11 カマイユ配色、フォカマイユ配色|Camaieu、Faux camaieu - 中小規模オフィスの配色を考える
3.1 執務スペースの配色
3.2 ミーティングスペースの配色 - 好感度の高いオフィスをつくる!
1. 配色の調和について
配色とは、色を組み合わせること。そして、配色で重要なのは「調和した状態にある」ことです。
調和する色を選ぶとなると「自信がない」「センスがないから・・」と臆してしまいがちですが、優れた配色に必要なのは、才能やセンスではなく、その仕組みやルールを知っておくこと。
色彩調和については、古来多くの学者により研究され様々な理論がありますが、わかりやすいものとして、それらを集約したアメリカの物理学者ジャッドの4つの原理があります。
秩序の原理
色空間の中で、一定の規則による組み合わせは調和するという考え方。色相環上で直線、幾何学模様を描く関係性を持つ配色は調和しやすい。
なじみの原理
見慣れた配色、特に自然界に存在する配色は調和するという考え方。夕焼け空、海と青空など、自然の風景の中で見られる色連鎖の配色は調和しやすい。
類似性(共通性)の原理
似た要素を持つ色同士は調和するという考え方。色相あるいはトーンに類似性(共通性)がある配色は調和しやすい。
明瞭性の原理
違いが大きい色の組み合わせは調和するという考え方。色相や明度の差がはっきりして明瞭な配色は調和しやすい。
以上がジャッドの4つの原理です。
実際には、印象というものは主観に基づくため確実な法則というものはありませんが、多くに共通する要素として、まずはこのような原理があることを知っていると配色を考える際の参考になるのではないでしょうか。
次に、これらの原理にあてはまる配色パターンをいくつか紹介します。
2. 配色のパターン
色がそれぞれ異なるイメージを持つように、配色(組み合わせ)もまた、パターンによって印象や効果が異なります。
2.1 ダイアード配色|Dyad
色相環で対極する位置にある色=補色を組み合わせるダイアード配色。Dyadとは”対になる2つ”、この場合は”対になる色”を意味します。英語で”補色”を意味するコンプリメンタリー(complementary)とも呼ばれます。
補色の組み合わせは互いを引き立たせるため、インパクトを出したいときに効果的です。高彩度での組み合わせは目を疲れさせ、落ち着かない印象になるので注意が必要ですが、面積比の調整で巧く使いこなせればセンスの良い印象を与える配色でもあります。
2.2 トライアド配色|Triad
色相環に正三角形を内接させ、その3つの頂点の色を組み合わせるトライアド配色。Triadとは”3つのユニット”を意味します。
バランスが良く安定感のある組み合わせで、にぎやかな印象を与えます。ダイアードの場合と同じく、高彩度での組み合わせでは落ち着かない印象になりがちなため、空間に適用する際には、トーンの選び方や面積比で調整する必要があります。
2.3 スプリットコンプリメンタリー配色|Split complementary
色相環上で補色関係にある色の一方を左右に分割(スプリット)させて組み合わせるスプリットコンプリメンタリー配色。トライアドが正三角形であるのに対し、こちらは二等辺三角形の位置関係になります。
補色の類似色と組み合わせることで対比が和らぐため、インパクトがありながらも、まとまりを感じさせる配色です。
2.4 アナロガス配色|Analogous color
色相環で隣り合う色を組み合わせるアナロガス配色。Analogous colorとは”類似した色”を意味します。
夕焼けの空や海、植物など自然の風景にも見られる組み合わせです。
連鎖的な色は視覚的になじみがあり、自然な印象でまとまりやすい配色です。インテリアに取り入れやすい配色でもあります。
2.5 ナチュラルハーモニー
ナチュラルハーモニーとは、自然界に見られる色彩調和を模した組み合わせで、黄に近い色を明るく、青紫に近い色を暗くする配色のことです。
これは「自然光の下では光が当たる部分は黄みを帯び、影の部分は青紫みを帯びて見える。この自然な色の関係性が認知できる状態が調和している」とした自然科学者ルードの理論が元になっています。
2.6 ドミナントカラー配色|Dominant color
同一色相で異なる複数のトーンを組み合わせるドミナントカラー配色。Dominantとは、”支配的(優勢)な”を意味します。
主となる色相の印象が全体を支配するため、色の心理効果を空間に取り入れたいときや、テーマカラーを強調したいときに適した配色です。明度差や濃淡のみで変化をつけるため、多色でも統一感があります。
2.7 トーン オン トーン配色|Tone on tone
ドミナントカラーの中でも特に明度差を大きくとって変化をつけるトーンオントーン配色。
色相に統一感がありながらも陰影のようなコントラストがあり、主になる色を印象付けながらもメリハリを出したいときに適した配色です。
2.8 ドミナントトーン配色|Dominant tone
同一トーンの異なる色相を組み合わせるドミナントトーン配色。先述のドミナントカラーが色相を統一するのに対し、ドミナントトーン配色は、トーンを統一します。
ライトなら爽やか、ダークなら大人っぽい等、それぞれのトーンが持つイメージが強調されるため、インテリアの雰囲気づくり適した配色です。複数の色相の組み合わせでもまとまりのある印象を与えます。
2.9 トーン イン トーン配色|Tone in tone
ドミナントトーンの中でも、明度が近い色相を組み合わせるトーンイントーン配色。
異なる色相でも統一感が出しやすく、トーンの持つイメージが強調されやすい配色です。
2.10 トーナルカラー配色|Tonal color
ドミナントトーンの中でも特に、純色に灰色を混合した中間色・濁色のみで組み合わせるトーナルカラー配色。ソフト、ダル、ライトグレイッシュ、グレイッシュなど、くすみのあるトーンで揃えて組み合わせます。
控えめで落ち着いた印象を与える配色です。主張し過ぎず、素朴で穏やかなイメージなります。
2.11 カマイユ配色、フォカマイユ配色 Camaieu、Faux camaieu
色相、トーンの近似色を組み合わせるカマイユ配色。Camaieuはフランス語で”単色画法”を意味します。
ほとんど同一色に見えるほどの微妙な差の色を組み合わせのため、元になる色が強調される配色です。
カマイユより少し色相やトーンに変化をつける配色は、”偽の”という意味のfauxを前につけてフォカマイユ(Faux camaieu)と呼ばれます。調和の中に妙味を出しやすい配色とも言えます。
以上が代表的な配色パターンです。
いろいろあって混乱しそうですが、まずは、配色にはこのようにパターンがあるということを把握しておきましょう。
後は、用途や目的に応じて、例えば、印刷物や看板なら見やすさや誘目性、オフィスや自習室なら落ち着き、子供向けの教室なら高揚感など、得たい効果やイメージに適したパターンを参考に配色を考えていくとよいと思います。
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【オフィスレイアウトお役立ち情報】おしゃれなオフィスのつくり方 7つのポイント
3. 中小規模オフィスの配色を考える
中小規模オフィスの新規開設やリニューアルといったプランニングでは、壁・床材の張り替え等内装工事から行う場合と、家具の入れ替えやレイアウト変更のみで行う場合とがあります。
内装材の色から選べた方が理想のイメージに近づけやすいということはありますが、家具の入れ替えのみであっても配色によるイメージの一新は可能です。
家具を中心としたオフィスの配色について考えてみましょう。
3.1 執務スペースの配色
業種や業務内容にもよりけりですが、執務スペースで重要とされるのは、気が散らず、穏やかな気持ちで過ごせる環境であること。配色パターンで言えば、例えばトーナルカラーなど、控えめで落ち着いた配色が好まれる傾向にあります。
執務スペースのレイアウトで要となるのは、デスクやフリーアドレステーブルといった家具。表面積が広い天板は、空間全体の印象に大きく影響するため、まずは全体でどのようなイメージを目指すのかを明確にしてから色を選ぶことが推奨されます。
オフィス向けデスクは、大抵の場合、ナチュラル木目・ダーク木目・ホワイトといった3色のカラー展開です。(ただし、同じ色名であってもシリーズごとに色みやトーンは異なるため、現物やチップサンプルなどで確認することをおすすめします)
それぞれどのような場合に適しているのか、簡単に整理してみます。
ナチュラル木目天板の執務スペース
木目の素材感が活きる、明るいトーンのナチュラル木目天板のデスク。執務空間に自然で和やかな印象を与えます。
床材も明るめのフローリングなどで質感やトーンが近似する場合には、デスクの脚部やチェアにホワイトやブラックなど無彩色を取り入れると印象が引き締まり、木目の質感を引き立たせることができます。
ダーク木目天板の執務スペース
暗いトーンのダーク木目天板のデスク。執務空間に重厚感と落ち着いた印象を与えます。
狭いスペースであれば、空間の上部にあたる壁や天井のトーンを明るめに、床は暗めにして重心を下げると、圧迫感が少なく空間に広がりを感じさせることができます。
ホワイト天板の執務スペース
光を反射し空間が明るく見えるホワイト天板のデスク。執務空間に清潔感とすっきりした印象を与えます。
無彩色でのモノトーン配色はもちろんのこと、どのような色相、トーンの色とでも合わせやすいため、テーマカラーを強調したい場合や、多色使いの賑やかさを中和したい場合などにも適しています。
【オフィスレイアウトお役立ち情報】オフィスデスクのレイアウト 基本の6形式
3.2 ミーティングスペースの配色
次に、会議室・ミーティングルームについてです。
ミーティングと一言でいっても、フォーマルな会議からセミナー、気軽な打ち合わせまで、規模も形態も様々ですが、目的を達成しやすいムード・雰囲気を演出するためには、やはり配色が重要なポイントになります。
会議室の場合も、表面積が広い天板の色は空間の印象に大きく影響します。ミーティングテーブルもデスクと同様で、主にはナチュラル木目・ダーク木目・ホワイトといったバリエーションがあります。
複数人が向かいあって座るミーティングテーブルの場合には、天板の形状もまた雰囲気づくりに影響しますので、合わせて考慮することが推奨されます。
ナチュラル木目天板のミーティングルーム
ナチュラル木目天板のミーティングテーブル。トーンが明るいほど空間に自然で穏やかな印象を与え、緊張感を和らげます。
橙や黄などの暖色と組み合わせると、親しみやすさや開放的な印象も加わり、コミュニケーションの活性化が期待できます。
ダーク木目天板のミーティングルーム
ダーク木目天板の会議テーブル。暗く深いトーンは空間に冷静さと落ち着きのある印象を与え、暖色系の色みであれば温かみも感じさせます。
空間全体を中間色・濁色でまとめ、アクセントカラーでメリハリをつけると殺風景になりすぎず、適度に緊張感のある空間になります。
ホワイト天板のミーティングルーム
空間全体が明るく見えるホワイト天板の会議テーブル。ミーティングルームにクリーンで軽やかな印象を与えます。
大勢が集まる会議室やセミナー会場でも、広さを感じさせる効果が得られるほか、多様な色相との組み合わせが可能なため、目的に応じて色の心理効果を活かしたいときのベースとしても適しています。
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